サッカーにおける戦術について | トリビアバンク
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サッカーにおける戦術について

サッカーにおける戦術について

サッカーにおける戦術について

サッカーの実況を聞いていると「デュエル」「ポゼッション」「バイタルエリア」など馴染みのない言葉が聞こえてきます。観戦初心者にとって初めて聞く言葉ばかりでどのようにして選手たちは動いているのだろうと疑問に感じたことあるのではないでしょうか。
そこで今回はサッカーにおける様々な戦術を例にあげ、解説したいと思います。少し難解に感じるかもしれませんが、多少なりと知識を身につけておくと、さらにサッカーを見るのが楽しくなるでしょう。

サッカーにおける戦術とは

戦術とは辞書から引用すると「作戦または戦闘の直接目標を、最も効果的に獲得することをねらいとして行われる方法的技術」とあります。サッカーに限らず集団競技は、選手がどんなに良くても、監督が有能であっても、自分勝手なプレーをされては試合で勝つことはできません。サッカーにおける戦術とは、試合で勝つという目標を達成するための方法や手段と考えていいでしょう。

フォーメーションについて

サッカーの戦術という話になると、まず思い浮かべるのがフォーメーションではないでしょうか。フォーメーションとは「構成」や「編成」という意味の言葉です。スポーツにおいてフォーメーションとは「選手の配置」や「選手の位置により作られる陣形」を意味することが多く、サッカーでは「チーム戦術の方針となる陣形」を指します。フォーメーションをベースに選手が動くことで、攻守の入れ替えが激しい流動的な試合であっても、選手は混乱することなく、自分の役割を果たすことができるのです。
サッカーにおいて戦術は無数に存在し考え方も様々です。昔は攻撃と守備の選手が完全に分かれた形が一般的でしたが、現在ではフォワードからセンターバックまでスペースをなるべく無くしてコンパクトに保ち、ポジション関係なく攻撃や守備をするという戦術、トータルフットボールが主流になっています。

フォーメーションの数字の意味

フォーメーションは「4-4-2」「4-3-3」などの数字で表記されます。左からディフェンダー(DF)、ミッドフィルダー(MF)、フォワード(FW)の人数を表したもので、各チームに1人しか配置しないゴールキーパー(GK)は表記されないのが一般的です。

フォーメーションの種類

どのフォーメーションにもメリット・デメリットがあるため、このフォーメーションが強いというものはありません。基本フォーメーションの例を挙げて、それぞれの特徴を紹介します。

4-4-2

現代サッカーにおける基本的なフォーメーションです。ピッチ上にバランスよく選手が配置されているため、組織的な守備(ゾーンディフェンス)を行いやすいことがメリットです。DFとMFがスペースを埋めやすく、ボールを持つ選手に対して2人で対処しやすい距離感を保つことができます。攻撃面においてはサイドを広く使うことで、クロスを上げたり、相手の背後をついたり、多彩な攻撃が行えます。

4-3-3

バランスの取れた4-4-2に比べ、攻撃的なフォーメーションです。3人のMFとFWがスペースを使いやすく、サイド攻撃やパスサッカーに向いています。また、FWから守備(プレッシング)をかけやすく、ショートカウンターを狙うこともできます。反面、相手からしてもスペースを狙いやすく、プレッシングがかからないと相手に抜かれてしまう危険性がデメリットです。

4-2-3-1(4-5-1)

日本代表が採用することの多いフォーメーションが4-2-3-1です。このフォーメーションではボランチを2枚配置しています。ボランチとはポルトガル語で舵取りという意味で、攻撃の起点となるポジションです。ボランチに加え前方にMFが3枚配置されます。流動性が高いので試合の流れに応じてポジションを変化させやすいのがメリットです。
攻撃面ではサイドバックの選手が参加しやすく、前方3枚のMFとFWと連携することでバリエーション豊かな攻撃が期待できます。守備面でもボランチが2枚なので、サイドバックの空いたスペースを埋めるなど、組織的な守備もでき、中盤の数が多いのでプレスがかけやすいのもメリットです。
FWが1枚しかないので孤立しやすく、相手から激しいマークを受けてしまう点がデメリットです。

攻撃戦術について

攻撃時の基本戦術について紹介します。大きく分けるとショートパス主体のポゼッション型と、相手からボールを奪ったら速攻でゴールを狙うカウンター型に分かれます。近年はどちらか一方ということよりは、上手く2種類を掛けあわせた戦術を構築するチームも多くなっています。

ポゼッション型

選手同士が距離を詰めることでパスを回しやすくし、ボールを保持しつつゴールを狙う戦術です。ボールを奪われやすいロングパスや大きなサイドチェンジは行わず、相手にボールを奪われる確率を減らせば、失点する確率も低くなるという考え方に基づいています。

カウンター型

相手からボールを奪ったら、すぐに前線へボールを送りゴールを狙う戦術です。ボールの保持はあまり考えず、ロングボールを主体とすることが多く、リアクションサッカーとも呼ばれています。

守備戦術について

守備戦術も大別すると2種類に分けられます。全体的に相手へ詰めるハイプレス型と自陣で守備を固めるリトリート型です。近年はハイプレスとカウンターを組み合わせた戦術がトレンドです。

ハイプレス型

全体的に前に出て相手陣営でプレッシャーをかけながらボールを奪う戦術です。その分、後方の守備は手薄になりますが、相手ゴール付近でボールが奪えると一気にチャンスになります。

リトリート型

ハイプレス型尾は逆に自陣で守備を固めるリスクの少ない戦術です。陣形を固めることができるので、数的不利を防ぐことができます。

サッカーの戦術用語について

サッカー観戦するうえで知っておきたい戦術用語について紹介します。

ポジショナルプレー

ポジショナルプレーとは、選手たちがより良いポジションをとりながらゲームを進めていくという戦術というよりは考え方です。ポジショナルプレーによって生み出された戦術の代表例にハーフスペース(5レーン理論)や偽サイドバックがあります。
ポジショナルプレーは動的にポジションを整理することで、サッカーにおける優位性を活かすことができます。3つの優位性とは数的優位、位置的優位、質的優位のことです。

位置的優位

位置的優位とは効果的な陣形、位置関係を維持した配置(ポジション)につくことによる優位性です。ボールの受け手が守備側の選手の間に立つことでマークが曖昧にする、守備側の選手の死角に立つことでマークしにくくなることで、自分たちが優位に立ってゲームを進められます。

数的優位

数的優位とは局面において相手の数を上回ることで得られる優位性です。片方のサイドに選手を寄せる、陣形をコンパクトにする、運動量を上げるといった方法で数的優位を得ます。同じ人数で行うサッカーはピッチ上のどこかの局面で数的優位なら、どこかで数的不利な状況が生まれます。ポジショナルプレーでは、数的優位を作ることと数的不利への対処を同時に狙います。

質的優位

ドリブルでマークを剥がせる、強いヘディングシュートが打てる、正確なクロスを上げられるなどストロングポイントを持った選手を活かすことを質的優位といいます。例えばドリブルが得意な選手ならサイドでフリーな状況を作ったり、マッチアップする相手選手に対して、あえて1対1の状況を作ったりすることができます。

ハーフスペース

サッカーのピッチを5分割にしたとき、サイドと中央に挟まれるエリアを指します。近代サッカーにおいて非常に重要視されるエリアで、以前はそのような言葉がなく言語化して使われるようになりました。
従来サッカーでは、ピッチを盾に分割する際、センターとサイドという3分割で考えられてきました。近代サッカーではハーフスペースを活用することが重要視され、戦術として取り入れられるようになりました。
ハーフスペースの中でも特にゴールに近いエリア(ペナルティエリア内)をニアゾーンといいます。特に重要なエリアなので、ニアゾーンをいかして攻略するかが非常に重要です。

偽サイドバック

偽サイドバックとは自チームがボールを保持した際に、サイドバックが中央によりボランチと同じ高さの位置に配置する戦術のことです。サイドバックがボランチと同じ中央に配置することで、中央に数的優位を作ることができます。この数的優位によってパスワークがしやすくなるメリットがあるのです。ただし、狭いエリアに選手が集まるので、偽サイドバックになる選手は高い技術が求められます。また、守備面においてはカウンターを受けた際、中央を使われづらくなるのもメリットです。
偽サイドバックの登場により、サイドを上下し正確なクロスを上げるという従来のサイドバックのイメージを大きく変えることになりました。

覚えておきたいサッカー用語

戦術ではないですが、サッカーの実況でよく使われる用語について解説します。

バイタルエリア

バイタルエリアとは得点につながりやすい重要なエリアのことです。バイタルを直訳すると「危険な」「重大な」という意味から分かると思います。攻撃時は最も攻略したい、守備時は一番気をつけたいスペースのことです。具体的にバイタルエリアとはDFとMFの間を指します。どうしてこの間が重要なのかというと、バイタルエリアにボールが入った場合、CBは前に出なければなりません。そうなると、ディフェンスラインが崩れ、CBの後ろにスペースが生まれてしまうのです。
このように、バイタルエリアに侵入することで相手DFを崩し、ゴールを奪う最大のチャンスとなります。

インテンシティ

インテンシティとはプレイの強さや激しさを表す言葉です。インテンシティという言葉を用いたのは元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニです。ザッケローニが会見でインテンシティという言葉を用いたことで日本でも使われるようになりました。しかし、何の強さを表現しているのか、明確に定義されているわけではなく、人によって捉え方が異なる言葉でもあります。
ただ、主に球際の強さ・激しさのフィジカル的な意味で使われることが多いようです。

トランジション

トランジションとは攻守の切り替えを指します。ボールを奪ったらすぐに攻撃に移るポジティブトランジション(ポジトラ)、逆にボールを奪われたらすぐに守備に移るネガティブトランジション(ネガトラ)と呼びます。サッカーの試合で、ボールを奪ってカウンターのチャンスなのにモタモタしてカウンター失敗という場面を見たことはないですか。スピーディーな展開の多いサッカーにおいてトランジションは非常に重要なのです。